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第1114話

Penulis: 宮サトリ
「本当にすることないのか?

こっちに来い」

弥生はその場でためらった。

「やっぱり......やめとこ?」

「君が来ないなら、僕が行くけど?」

二秒ほど迷った末、さっきの出来事を思い出した弥生は、しぶしぶ足を動かして彼のもとへ歩み寄った。

素直に近づいてくる彼女を見て、瑛介はまた小さく笑い、指先で彼女の頬を軽くつまんだ。

「どうした、急におとなしくなったじゃないか?」

「......無理にする意味はないでしょ」

弥生は、先ほど自分が捕まったあとに起きたことをまだ忘れていなかった。

「まあ、確かに」

瑛介はそのふくれっ面が可愛くて、もう一度頬をつまんだ。

「だから覚えとけ。次は逃げても無駄だ。どこにに隠れても、僕はすぐに君を見つけて捕まえる」

そう言って、彼は身を屈め、彼女のなめらかな額に軽く口づけた。

温かい吐息が頬をかすめ、弥生は思わず目を閉じた。

額から彼の唇が離れたとき、弥生は嵐のような展開を覚悟していた。

だが、瑛介はふいに腕を伸ばし、彼女をそっと抱きしめた。

「......え?」

弥生は目を見開いた。

しかし、彼はそれ以上のことをしようとはせず、ただ抱きしめているだけだった。

「あなた......」

言いかけて、弥生は言葉を失った。

弥生は「なんで続けないの?」と言おうとしたのだ。

「どうした?」瑛介が彼女の表情を見て笑う。

「残念か?もう少しここにいたかった?」

「そんなことない!」

弥生は反射的に否定した。

「帰ろう、もう!」

そう言って彼を押し離し、腕をつかんで出口へ向かった。

瑛介は彼女の小さな手が自分の手を引くのを感じながら、口元に優しい笑みを浮かべたまま、彼女と一緒にオフィスを出た。

来るときは派手で、全社員が二人の存在に気づくほどだった。

当然、静かに出るはずもない。

結果、弥生はもう一度、社員たちの好奇の視線を一身に浴びる羽目になった。

外へ出るころには、彼女の顔は真っ赤だった。

「これから会社に来るとき、あなたはもう一緒に来ないで」

車に乗り込むとき、弥生は思わず不満げに言った。

「なんで?」

弥生が答えないので、彼は続けた。

「会社の人たちの目が気になる?」

「そうじゃないの。私は仕事をしに来てるの。あなたは社員じゃないでしょ?」

すでに瑛介は彼女の隣に体
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